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本蔵-知る司書ぞ知る(43号)

印刷用ページを表示する 掲載日:2018年5月20日更新

本との新たな出会いを願って、図書館で働く職員が新人からベテランまで交替でオススメ本を紹介します。大阪府立中央図書館の幅広い蔵書をお楽しみください。

2018年5月20日版

今月のトピック 【コバルト文庫創刊40年】

 数多くの文庫が刊行されている現在、文庫をとりまく環境は以前とは大きく異なっています。かつては、単行本で刊行され一定の評価を得た作品が文庫に収録されるのが通例でしたが、今日では書き下ろしや文庫オリジナルの作品が中心となりました。当初単行本で刊行されていたシリーズが、途中の巻から文庫に変わったり、研究書や学習参考書の類のものも文庫本になってきています。
 文庫の歴史を語るうえで欠かせないのが、若者向けの文庫の創刊です。そのさきがけのひとつ、集英社のコバルト文庫は、今から40年前に創刊されました。この世界では老舗のこの文庫では、次に紹介する川端康成や平岩弓枝以外にも、津村節子や川上宗薫など、今からみればやや意外とも思える作家の作品が収録されていました。

コバルト文庫40年カタログ:コバルト文庫創刊40年公式記録』(烏兎沼佳代/著 集英社 2017.12)

コバルト文庫創刊40周年を記念して刊行された公式記録です。佐藤愛子の独占インタビューや作家による対談、約4500冊に及ぶ「コバルト文庫全部リスト」や一部ですがカラーの書影など、コバルト文庫の40年の歴史が収録されています。

万葉姉妹/こまどり温泉』(川端康成/著 フレア 1996.11)

ノーベル文学賞作家川端康成の少女向け小説です。当館ではコバルト文庫版は所蔵していませんが、フレア文庫版でご覧いただけます。万葉集から名づけられた安見子と夏実の姉妹の物語で、初出誌「ひまわり」連載時の挿絵が収録されています。なお、コバルト文庫での刊行は、前述の「コバルト文庫全部リスト」によると1977年6月となっています。

信号は青』(平岩弓枝/著 集英社 1978.3) 

著者は、1959年(昭和34年)、『鏨師』で第41回直木賞を受賞しています。現在では「御宿かわせみシリーズ」や「はやぶさ新八シリーズ」などの時代小説でご存じの方が多いかもしれません。物語は、有名女子高の生徒である青木公子と編入生の本多みよきの交流を中心に、最初は同級生になじめなかったみよきが次第に打ち解けてゆく姿が描かれています。

今月の蔵出し

 

水瓶座の少女(野呂邦暢小説集成 7)』(野呂邦暢/著 文遊社 2016.6)

 野呂邦暢は「本蔵」の第1回で取り上げた作家です。本書には、野呂の幻想小説・ジュニア小説や初期単行本未収録作品が収められており、かつてコバルト文庫より刊行された次の2冊も収録されています。
 1冊めは短編集『文彦のたたかい』で、1978年2月に刊行されました。「文彦のたたかい」「うらぎり」「真夜中の声」「弘之のトランペット」「公園から帰る」の5作品が収録されています。2冊めは長編『水瓶座の少女』で、1979年7月に刊行されました。いずれも当時は珍しかった中高生向け小説誌に掲載された作品です。
 現在では2冊共絶版になっており、所蔵館を調べたところ、府内の公共図書館での所蔵は無さそうです。また、古書で入手するにもちょっとしたプレミアがついており手を出し難い状況でしたが、この度、図書館で読んでいただけるようになりました。ぜひ手にとっていただければと思います。

 ところで、プレミアのことに触れたので蛇足をひとつ。コバルト文庫でのプレミアといえば、以前は『たんぽぽ娘』が代表的な作品のひとつでした。この作品は『ビブリア古書堂の事件手帖3』の「第1話:ロバート・F・ヤング『たんぽぽ娘』(集英社文庫)」に登場します。コバルト文庫版『たんぽぽ娘』は、国際児童文学館をはじめ府内で数館所蔵があります。

【ツンドク】

君の膵臓をたべたい(双葉文庫)』 (住野よる/著 双葉社 2017.4)

 この小説は、2017年、実写映画化され、今年に入ってからは劇場アニメ化されました。中・高生だけでなく世代を超えた人気がある小説で、私自身も家族で映画を観た帰りに本書を買いました。
 タイトルから乗り気でない私でしたが、実際映画を観てみると、話にどんどん夢中になりハンカチをもって涙を流している自分がいました。普段泣かない私が、涙を流していることに家族がびっくりしたほどです。主人公が私の娘と同じ高校生ということで、娘と重ねて観ていたからかもしれません。
 膵臓の病気になり余命宣告を受けながらも明るく懸命に生きる山内咲良。そして咲良の病気を唯一知るクラスメイトの「僕」。咲良と「僕」は性格が反対でしたが、一緒に食事をしたり街に出かけたりして仲が深まっていきます。いつも明るく振る舞っていた咲良が、迫りくる死への恐怖から不安になる場面には心が痛みました。
 咲良が亡くなって歳月が過ぎ、心の整理がつき始めた「僕」が、咲良の遺影の前で咲良の母と語り合う場面があります。ここは咲良を思い出し、涙を流さずに読むことはできませんでした。
 また本書は、読者の私たちに、登場人物の台詞等を通して、さまざまな大切なメッセージを送っています。その一つに咲良が「僕」に伝えた言葉があります。
 「違うよ。偶然じゃない。私達は、皆、自分で選んでここに来たの。君と私がクラスが一緒だったのも、あの日病院にいたのも、偶然じゃない。運命なんかでもない。君が今までしてきた選択と、私が今までしてきた選択が、私達を会わせたの。私達は、自分の意思で出会ったんだよ」
 この言葉を読みながら、私は、大学時代に恩師から頂いた中国の詩を思い出しました。
 「世人等間に聚まり 亦た復た等間に別る 我輩の会うこと非常」
 (現代語訳)「世間の人々は普通に出会い別れる。しかし私たちの関係はそんなありふれた関係ではない。何があって固い友情で結ばれている。」

 また、この紹介文を書いていて、1年以上前にお会いしたご夫妻のことも思い出しました。『My Happiness Rule』(※中之島図書館のみ所蔵)というご自身の著作を寄贈してくださったご夫妻です。この本にはお子様のはるかちゃんとの出会いと別れが綴られています。生まれて間もなく心臓の病気がわかり、闘病生活を過ごすはるかちゃんでしたが、それでも周りに希望を送るはるかちゃんとご家族の助け合いに心が動かされたことを覚えています。

 本書を読めば、こんなふうに大切な人や心に残る言葉等さまざまなことを思い出すきっかけになるのではないでしょうか。この紹介文を読んで本書を手に取っていただき、そんな時間を持っていただければ、これほどうれしいことはありません。 

【百悠】